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ここまで述べてきたインドネシア・イスラムの新しい生活様式について、岩手県立大学の見市建氏は、「宗教的な義務の履行や制度的な拡充とともに、マーケットに適応した『ポップ』なイスラームが流通しているのが現代的特徴」、と『インドネシア イスラーム主義のゆくえ』(平凡社)で述べている。
従来日本文化はイスラムとは縁薄いと考えられてきたが、「ポップなイスラム」であるならば、漫画、アニメなどのポップカルチャーで世界に注目される現代日本文化との親和性はそれなりにあるのだろうと考えた。この視点から調べると、インドネシアの「ポップなイスラム」に日本文化が少なからぬ影響を与え、「ポップなイスラム」に華やかな色どりを添えていることに気がついた。
以下の漫画をご覧いただきたい。「コンパス」紙は、青少年向け紙面をもっているが、そのなかに読者が投稿する「Komik Muda」(若者コミック)というコーナーがある。7月のテーマは「断食」。そこに明らかに日本の少女漫画の影響を受けたと思われる作品が掲載されていた。断食明けを指折り待ちながらグータラしている兄に対して、「ちょっとは家事を手伝いなさいよ」と小言を言う妹、という構図である。
子どもの頃から日本の漫画、アニメに慣れ親しんできたインドネシアの高校生や大学生は実に器用に、日本の漫画タッチの作画をして見せる。イスラムが彼らのライフスタイルの一部であるならば、彼らが描く漫画のなかにイスラムが登場するのは自然なことでもある。ジャカルタの書店に並ぶ子ども向けイスラム関連書籍のなかにも、マンガ風の絵本を見出すのは容易だ。
現代インドネシアのイスラム的生活様式のなかで、確実に日本の漫画は若者たちの自己表現の手段として、一定のステータスを確保しているのだ。