NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

断食月にみるイスラムの多面性

ムスリム・ファッションに見る柔軟なイスラム受容

 経済の次に文化の受容という側面から考えてみよう。

 ラマダーンを前に、ラマダーン商戦を盛り上げるかのようなイベント「ジャカルタ・イスラミック・ファッション週間」が、ジャカルタ・コンベンション・センターで6月26日から30日まで開催され、「ムスリム・ファッション」の最新作を集めたファッション・ショーや展示即売会が連日行われた。

 宗教意識が高まるラマダーンの時期、「ムスリム・ファッション」の需要は拡大する。肌を覆う面積が広いムスリム・ファッションにはバティックやイカットなどの伝統的なインドネシアの布が用いられ、女性たちはカラフルで、お洒落だ。イスラム教徒の女性が着用するヒジャブ、ジルバブ(スカーフ)等のイスラム衣装は女性を束縛するイスラムの象徴として理解されがちであるが、会場では女性たちの自己表現の手段として、ヒジャブ、ジルバブが躍動している。イスラム衣装

 「ジャカルタ・ポスト」紙(6/30)によれば、主催者のイイス・R・スレイマン実行委員長は、「インドネシアのイスラム女性たちにイスラムの教えに反している負い目を感じることなく、最新ファッションを楽しんでほしいという願いから、このイベントを企画しました」と述べている。たしかにイスラム文化を柔軟にとらえ、大胆に欧米発ファッションを取り入れた作品がファッション・ショーで披露されている。モデルの肌の露出が少なくジルバブを被っていることを除けば、気分はパリ、ニューヨーク、東京のファッション・ショーと変わらない。

 作品を出品したデザイナーのバルリ・アスマラ氏によれば、往年のオードリー・ヘップバーンや1940年代のフランス映画を意識したノスタルジックな雰囲気をイメージしたとのこと。また「ギリシア神話の女神をイメージした」(「じゃかるた新聞」見出し6/27)コレクションも出品されていた。こうなってくると、サウジアラビアのワッハービズムなど保守派イスラムが忌み嫌う偶像崇拝、多神教的イメージまでがムスリム・ファッションに入りこんでいることになる。

 20年前と比べてジルバブを被る女性たちの姿が目に見えて増えた。ムスリム・ファッション産業は、イスラムの柔軟な解釈で、欧米ファッションへの関心も否定しがたい女性心理に寄り添いつつ、インドネシア独自のムスリム・ファッションを確立する戦略をとって成功をおさめているのである。

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2013年7月26日 up date

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