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入浴後K先生の言葉を思い出し、腕立て伏せをやってみようと床に両手を突き腕を曲げた。何年振りだろうか。一回目は何とか腕を伸ばせたが、二回目は出来ない。愕然とした。翌た早朝に、もしかしてと思い、近くの公園に行き鉄棒に下った。体が重くて腕を曲げようと思っても曲らない。体を引き上げられない。懸垂が一回も出来ないのだ。己の筋力の衰えを正に自覚した瞬間、「人間五十年、下天の内を・・・」ともがきながら信長が好んだ敦盛を唸る。思えばこの十年以上運動らしいことは全くしていないが、これ程に衰えていたとはと猛反省をした。
長男が飼っていた二才になる雌猫(名前はスー)が我家に居候している。いつも日向ぼっこしながら眠っているのに、1メートル位の食器棚には何の苦労もなく跳び上り、その跳躍力は見事である。更に一階から二階に階段を駆け抜ける機敏さは、いつも寝ているスーとは思えない。この動きと自分の老化を比較して発見したことがある。スーは眠りから覚めて行動を開始する前に、必ず全身をゆっくりと伸ばしている。この単純な筋肉伸ばしを一日に何回も繰り返し、筋力を保っているのだ。我々いや私はこの動物的本能を忘れて久しい。
「顔は毎日洗え」とはマンネリ化の戒めであり、船乗りは気がつかぬ間に船底に牡蠣や富士壺が付着し速力が落ちることを知っている。走ることも泳ぐことも、また懸垂や腕立てにも自信を持っていたが、知らぬ間に筋力が落ちていたのだ。肩凝りの原因を発見し、筋力の老化を自覚させて頂いたK先生にはとても感謝している。この五ヶ月は通勤の電車も座ることを止めて吊り革にぶら下がり、一時間立ったまま貯筋に努めている。
日本丸も船長が代わり、船底が汚れて速力が落ちていることにやっと気が付いた。政治の力で汚れを落とすことができれば日本丸の更年期も必ずや回復する。