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国際問題コラム「世界の鼓動」

EUの農業補助金で大地主が潤う

The Guardianの記事によると、農地内に建造物を作る場合、お役所の許可(planning permission)が要らないのですね。これは庶民にはあり得ないハナシであると言っているのですが、例えば建物によっては、土地全体の価値を引き上げるものだってあり得る・・・という具合にいろいろと特別待遇されている上に「補助金」です。これこそ金持ちによる貧乏人の「恥を知らない略奪行為」(unembarrassed robbery of the poor by the rich)であり

The current structure of farm subsidies epitomises the British government’s defining project: capitalism for the poor and socialism for the rich.

現在の農業補助の構造は、英国政府の明確なる施策を反映している。すなわち貧乏人には資本主義、金持ちには社会主義という施策である。

と怒っております。

この記事の問題点は、具体的に誰がどのような土地を持っていて、いくらの補助金を受け取ったのかということが書いていないことです。ネットを調べてみたら、2010年11月10日付のDaily Mailが

Look who owns Britain: A third of the country STILL belongs to the aristocracy

英国の国土の3分の1がいまだに貴族によって所有されている

という特集記事を掲載しています。それによると、英国では全人口のわずか0.6%にあたる36,000の個人がカントリーサイドの土地の半分(約2000万エーカー)を所有しているのだそうです。偶然ですが2000万エーカーというのは北海道(約2100万エーカー)よりも少しだけ小さい面積であり、英国全体の広さ(6000万エーカー)のおよそ3分の1にあたる。2000万エーカーを36,000人が所有しているということは、単純計算で一人当たり560エーカーということになる(これを日本の坪に直すとざっと「69万坪」ということに・・・と言ってもピンとこないけれど!)。ただそれはあくまでも単純に割り算をしただけの数字で、実際には2000万エーカーの殆どを1,200人の貴族(とそのファミリー)が所有しているのだそうです。

Daily Mailで紹介されている英国の土地持ちナンバーワンはDuke of Buccleuchという公爵で土地の広さは24万エーカー(約3億坪!)、資産価値は約10億ポンド(約1500億円)だそうです。チャールズ皇太子はDuke of Cornwallという肩書で約13万エーカー(資産価値10~12億ポンド)を持っているのだそうです。

なおEUの農業補助金と土地所有者の問題は2012年3月にBBCの看板ドキュメンタリー番組のPanoramaが取り上げたことがあるのですが、その際の情報によると、その時点でも英国には「25万ポンド以上」の補助金を受け取っていた土地所有者が889人いたのだそうです。その中で50万ポンド以上受け取っている人が133人、100万ポンド以上という人が47人いたのだそうです。ただここでも土地の大きさには触れられていない。

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2013年7月15日 up date

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