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国際問題コラム「世界の鼓動」

EUの農業補助金で大地主が潤う

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

7月1日付のThe Guardianに

英国政府は国内では貧乏人向けの予算を削減しながら、ヨーロッパにおいては金持ち農家に与えられる補助金を確保するべく戦っている。

As the British government cut benefits for the poor at home, in Europe it fought to keep millions in subsidies for wealthy farmers

という書き出しの記事が出ています。これはEUが加盟国の農家に与える補助金に関するものなのですが、英国における土地所有についても触れています。これについては前々から気になっていたし、英国の主要メディアには農業政策に関する記事があまり出ていないように思っていたので興味を持って読んでみました。

この記事によるとEUからの農業補助金にもいろいろあり、農家への提供の仕方も国によって違うのだそうですが、英国において主体と言われるのがsingle farm payment(単一支払制度)と呼ばれるもの。これは所有もしくは賃借している土地の広さを基準に決められるのだそうです。広ければ広いほど補助金の額も大きくなるということです。

EUの補助金制度を規定しているのが共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)と呼ばれるものです。ここ数年、加盟国の間では農業保護の度が過ぎるというので、補助金の額を制限しようという動きがあり、最近までルクセンブルグの欧州議会を舞台に交渉が行われてきたのですが、Guardianの記事によると、補助金制限の動きに最も強硬に抵抗したのがドイツと英国だった。自由市場経済のチャンピオンを自称するこの2か国のロビー活動のお陰で最終決定が順延されてしまったのだそうです。

補助金制限については二つの提案がなされていた。一つはCappingというもので上限を決めようというやり方で、上限を年間30万ユーロ(25万ポンド:約3500万円)にしようという提案がなされていた。もう一つはDegressivityと呼ばれるもので、補助金額が15万ユーロ(12.5万ポンド:約1800万円)を超えたものについて、ヘクタールあたりの補助金額を徐々に減額するというやり方だった。英国政府の代表(この場合は環境大臣)はこの両方に反対したのだそうです。

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2013年7月15日 up date

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