NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

インドネシア外交の新潮流

お手本としての韓国

  他の東南アジア諸国同様にインドネシアでも今、韓国のポップカルチャーがこの国の少年少女たちの心をわしづかみにしている。

韓流インドネシア・アイドル

韓流インドネシア・アイドル

 「韓流、威力まざまざ」の見出しで、当地発行「じゃかるた新聞」(6/27)が報じるところ、6月22日ジャカルタに開店した韓国系デパート「ロッテ・ショッピング・アベニュー」のイベントに、アイドル「スーパージュニア」のメンバーが出席すると聞きつけたファンが早朝からモールに列を作り、大変な人出となったとのこと。群衆の大半は、10代の少女たちだ。スーパージュニアは2012年4月に初のインドネシア公演を敢行し、3日間で2万5千人を動員した。

  6月25日にはジャカルタで韓国文化センターが主催する韓国映画祭2013が開幕した。インドネシア政府高官や国民的女優クリスティン・ハキムらが並ぶなか、韓国大使が高らかに開会を宣言した。観客席に座っているのは、こちらも多くが10代、20代の若者だ。その中には「韓流」ファッションで身を固めたインドネシアのアイドル・グループの姿も、、、 (写真1)。

オープニングで公開されていた映画は陳腐なB級映画で若干白けてしまったが、隣に座ったインドネシアのお嬢さんは、スクリーンのなかで韓流スターたちがサンゲタンを食べるシーンに「かっこいいー」「おいしそー」とうっとりしている。完全に恋する乙女のまなざしだ。

  インドネシアを魅了する「韓流」の影響は、単にエンターティメントの領域にとどまらない。ポップカルチャーは、韓国企業のインドネシアでの市場拡大を後押しし、インドネシア国民のあいだに韓国・韓国民への好感度を高めることで韓国外交に多大な貢献をなしている。韓国企業のインドネシア進出は、従来石油化学、鉄鋼、電器製品などの工業分野が中心であったが、近年では韓流人気とともに、消費財・サービス産業が相ついでインドネシアに乗りこんできている。

 韓国中央日報(6/11)によれば、2008年にインドネシア一号店をだしたロッテマートは今年2月にまでに店舗数を32店にまで増やし、売上高が1兆ウォンを越した。2011年にインドネシアにやってきたばかりのロッテリアもすでに19店を運営している。2012年にジャカルタ国際空港に開設されたロッテの免税店では、女優チェ・ジウが艶然と微笑む広告パネルが旅行客の目を奪う。ジャカルタ店の売り上げは、すでに世界トップのDFSを抜いたという。

 韓流の成功は、インドネシア政府にとっても大きな刺激となっているようだ。韓国国際映画祭の舞台挨拶にたったインドネシア教育文化省高官は、「韓流は韓国の国益増進に大きく貢献した。戦略的に文化を育てて、これを海外に輸出した韓国政府の文化外交は、インドネシアが見習うべき手本だ」という趣旨の発言をした。欧米や日本のような先進国ではなく、中進国である韓国が文化外交で成功をおさめていることが、インドネシア政府をやる気にさせている。インドネシア文化の対外発信を通じて経済を活性化させ、新たな雇用を創出しようと、2011年に観光・創造経済省を創設し、「やり手」政治家マリ・エルカ・パンゲストゥを大臣に任命したのは、本通信15号で述べた通り。

 観光・創造経済省は、マリ大臣の号令下に本格的な文化外交を開始した。今年1月の世界経済フォーラムでは、女優のプリシラ・ナスンチオンらを送り込み、インドネシア文化イベントを開催して、インドネシア料理や工芸品を世界経済の指導者たちに売りこんだ。2012年10月には、日本の経済産業省とのあいだで、映画、音楽、ゲーム、ファッション、演劇、工芸デザイン等「創造産業」分野が、今後インドネシアと日本の重要な経済協力の柱になるという認識に基づいて、産業振興、人材育成等について連携を深めていくことに合意している。

 

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2013年7月14日 up date

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