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賛助会員 小川 忠
(筆者は国際交流基金のジャカルタ事務所長として独自に情報発信をしている)
「パブリック・ディプロマシー(public diplomacy)」という言葉をご存じだろうか。1960年代に冷戦を戦っていた米国の外交関係者のあいだで使われ始めた外交概念である。この概念では、対外広報・宣伝や国際文化交流を包括的に論じる。日本語には「広報文化外交」「広報外交」「対市民外交」等に訳されているが、未だしっくりくる訳語はない。
「パブリック・ディプロマシー」はグローバリゼーション現象が加速した90年代以降、欧州でも注目されるようになり、特に米国同時多発テロ事件後、「テロとの戦い」を始めた米国が対中東外交の重要な外交ツールとしてパブリック・ディプロマシーを重視し、その増強を図ったことから成否をめぐる議論がまきおこり、世界にその言葉が拡がるようになった。日本では2004年に外務省が広報文化交流部の英訳にPublic Diplomacy Departmentがあてられたことから公的な認知を受けた言葉となっている。
実はこの「パブリック・ディプロマシー」、日本以上に中国、韓国、そして近年では東南アジア諸国が積極的に活用しようという動きを見せている。今回は、インドネシアが、この新しい外交概念をどのように吸収し、活用しようとしているのか、その一端を紹介してみたい。