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最近の中国は、最高指導部の権力移行の直後にあたり、経済成長のあきらかな減速とともに、貧富の格差の拡大、党官僚の腐敗汚職、環境汚染、人権抑圧などをめぐり、多くの社会不安に直面しているように見える。そのような状況下で、習近平体制は政権の求心力を高め、一党独裁体制を維持するために、日本を「悪者」のイメージで描こうとする傾向が強まっている。尖閣諸島に関係して「日本が第2次大戦後の国際秩序を破壊した」などと荒唐無稽な言い方をして、第2次大戦における連合国対日独の対決の歴史を思い出させるような対外世論戦を展開しつつあるのはその一環であろう。さらに、「ファシズムの侵略の歴史を否定し、美化しようとする、いかなる言動も受け入れられない」(李克強首相)と過去の歴史に結び付けようとする発言もある。それらの主たる狙いが日本を牽制し、同時に日米の離間を図ることにあるのは、もはや贅言を要しないだろう。
今日の中国の硬直化した対外姿勢は、国内の諸要因を背景に、当分変わることはなさそうである。日本としては中国に対し対話と交流のドアは常に開きつつも、同時に、日米同盟関係の強化、沖縄県南西諸島の防衛、内外世論戦への対応などに一層の努力を傾注する必要があると考えられる。
(本稿は2012年10月の「アジア問題懇話会」
(註1)1975年10月22日の衆議院予算委員会における宮沢喜一外相答弁
(註2)1979年5月30日外務委員会における園田外相答弁