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国際問題コラム「世界の鼓動」

激化するシリア内戦とゴラン高原

水谷 徹哉

(イスラエル在住、多様な危機管理研修を実施しているNPO・ガリリー研究所所属)

 

混迷を深めるシリアの内戦が隣国イスラエルに複雑な影を落としている。

同内戦の余波が両国の境界にあるゴラン高原に及んでいることに加え、内戦の行方に、イスラエル政府は重大な警戒を強めているためだ。

2011年6月の民衆運動に端を発したシリア内戦は2012年以降、激化の一途をたどり、今年に入ってからゴラン高原のシリア側でも政府軍と反政府軍の衝突が小規模ながら頻発している。戦闘の流れ弾や迫撃砲弾がイスラエル側ゴラン高原に着弾し、同高原に駐留する国連のPKO(平和維持活動)部隊の兵士数人が負傷する事件も起きている。

この事態に、いち早く撤退を決めたのは日本の自衛隊で、自衛隊は1996年以来、17年間という日本のPKO協力としては最長記録となる貢献を続けてきたが、ことし1月に全面的に引き揚げた。ついで、同国連軍の中核をなすフィリッピンやオーストリア軍も撤収を表明し、その規模はすでに3分の1程度(約300人)に縮小している。

ゴラン高原は1967年の第三次中東戦争によってイスラエルが併合し、第四次中東戦争の終結後の1974年以来、東側のシリア、北側のレバノンとの停戦ラインを共有する緩衝地帯に国連PKO軍が停戦監視のため、駐留してきた。イスラエルにとってこの存在は国家安全保障上それなりの大きな意味を持っており、併合は国際的に違法となっているにもかかわらず、これまで同高原が極めて平穏な状態を保ってきたことから、イスラエルはそれに便乗するかのように、着々と実効支配の既成事実を積み重ねてきた。

1981年にはそれまでの軍政統治から民生へと移行し、同高原地域在住の旧シリア系住民にはイスラエルの市民権も授与された。またユダヤ系住民による農地の開拓や、入植活動も併せて行なわれ、多くのユダヤ人入植地が存在する。

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2013年6月24日 up date

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