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会員 安藝 洋一
長く続いた軍事政権の下で、中国への傾斜を強め国際社会から孤立化の道を歩みつつあったミャンマーは、2011年夏ごろから劇的な政策転換を遂げ、民主化・改革を推進している。経済制裁を課していた米国との関係改善も進み、2013年5月20日にはワシントンを訪問したテイン・セイン大統領が米オバマ大統領と首脳会談を行い(ミャンマー首脳の公式訪米は約半世紀ぶりという)、両国間の貿易・投資拡大、石油・ガス、電話通信網等のインフラ整備への協力、ミャンマーにおける民主化の更なる進展の必要性等について一致したとの報道が為されている。
この大きな流れの中で、わが国においても安倍晋三内閣総理大臣が、日本の総理大臣としては36年ぶりにミャンマーを公式訪問し(2013年5月24日から26日まで。1977年8月の福田総理訪問以来)、民生向上・貧困削減、人材育成、持続的発展のためのインフラ整備等への幅広い協力を行うために円借款510億円、無償資金・技術協力400億円、計910億円を2013年度末までに順次進めることが表明された。また、総理には約40社の経営幹部や自治体関係者が同行し、日本・ミャンマー経済セミナーなどを通じて両国関係者の交流が加速され、官民の協力による日本企業の事業展開に弾みをつける好機となった。
わが国の新聞、テレビも連日ミャンマー関連の報道を盛んに行っており、経済特区、電力、水道整備等インフラ整備を推進する政府開発援助(Official Development Assistance,ODA)に加え、民間の強い投資意欲を反映して様々な業種の企業進出が報じられている。軍事政権の期間が非常に長かったためにそれ以前のミャンマーにおける様々な経済活動が人々の記憶にあまり残っていないこと、同じ理由から日本・ミャンマー双方の経済開発、民間投資の担い手に世代交代が進んだことなどからここ数年間の急激な動きがあたかも両国間の歴史が新たに始まるような印象を与える論調も見られるが、実際には経済協力は戦後賠償から始まり、その事業に伴う民間企業進出も行われており、両国の関係には密接な長い歴史が刻まれている。