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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、
アメリカの社会問題研究機関であるPew Researchのサイト(5月13日付)がEUの現状を伝える世論調査結果を報告しています。題して
The New Sick Man of Europe: the European Union
欧州の新たな病人:European Union
記事は次のような書き出しになっています。
いまやヨーロッパの病人はEUそのものである。これまでの半世紀、より団結したヨーロッパを創り出そうという努力がなされてきたが、ユーロ危機がもたらした最大の犠牲者はこのような努力そのものである。(統一ヨーロッパを作り出そうという)ヨーロッパ・プロジェクトはいまやヨーロッパ中で評判の悪いものとなってしまっている。
The European Union is the new sick man of Europe. The effort over the past half century to create a more united Europe is now the principal casualty of the euro crisis. The European project now stands in disrepute across much of Europe.
“Sick Man of Europe”は今から30年以上も前の英国に貼られたレッテルですが、Pew Researchの記事によると、これまでにこの種のレッテルを貼られた国はたくさんあるのですね。ドイツ、イタリア、ポルトガル・・・危機的な状況にある国を指してSick Manというわけです。で、現在のSick ManはEUそのものだということです。Pew Researchが、昨年(2012年)と今年(2013年)の2回にわたってEU加盟8カ国(ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、チェコ)の人々(合計約7600人)がそれぞれEUおよび自国とEUの関係についてどのような思いでいるのかを調べた結果、次のような結果が出ています。
左側の表が「欧州統一によってヨーロッパの経済力が強くなった」と考える人の割合、右側は「EUに好意的」な人々の割合です。例えばフランス人は、昨年の時点では36%が「経済が強くなった」としていたのに、今年はこれが22%にまで落ちている。さらに「EUに好意的」と考えるフランス人は60%から41%にまで落ち込んでいる。ドイツ、フランス、英国の数字を比較すると次のようなことが言える。
ドイツ人:経済統合についての支持率は減っているが、それでも半数以上(54%)が支持している。「EUに好意的」は8ポイント減ったとはいえいまだに6割の人がEUという存在を支持している。
英国人:経済統合も「好意的」もマイナスではあるけれど、独仏に比べれば落ち込みの度合は緩やかです。英国人の場合、EUそのものへの期待がもともと低いということも緩やかな落ち込みの理由になっている。
フランス人:経済統合については36%→22%、「好意的」は60%→41%と両方とも極端に落ち込んでいる。