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国際問題コラム「世界の鼓動」

イスラエルー資源立国への道と安保戦略の変化

ただ、同条約には双方間の経済協力に関する条項が策定され、双方国境を跨ぐ共同パイプラインの建設や、これを通じたエジプトからのイスラエルへの天然ガスの供給等が合意された。同条項に基づき2005年以来、エジプトは市場価格よりも圧倒的に低い価格にてイスラエルに対して安定した天然ガスの供給を行ない、この供給は一時イスラエルが消費する天然ガス全体の40%をも占めるレベルに達するが、これとて問題が内包していた。

そもそもこれは、平和交渉の過程で、仲介役の米国がシナイ半島の返還を受ける交換条件としてエジプトに半ば強要した背景があり、エジプト国内では市民の大半がこれを極めて不当な措置と捉えていた。そして、2011年の「アラブの春」による民衆蜂起の結果、ムバラク長期独裁政権が崩壊し、その動乱によって、イスラエルへ通じるガス・パイプが破壊される事件が多発した。2012年4月、新たに政権に就いたモルシ政権は、ついにイスラエルへのガス供給をめぐる合意を正式に破棄してしまった。

これらの不安定な政治的背景を教訓とし、イスラエルはこれまで、自国需要のためのエネルギー調達先を多角化し、可能な限りリスクを分散する措置をとってきた。現在、イスラエルは国内の石油需要のほぼ100%を輸入に頼る状態となっているが、主要な調達先は、ロシアを筆頭に旧ソ連圏の西アジア諸国や、アフリカ諸国、メキシコなどである。

イスラエルはまたエネルギー生産手段の多様化にもいち早く取り組んできた。石油に加え、石炭は未だに主要な燃料源であり、天然ガス、シェール・ガス等の効率的なエネルギー転換技術等においても世界では先端レベルにある。クリーン・エネルギー分野においても、国内研究機関で数々の科学者達が革新的な技術を生み出しており、これらに関連したイノベーションを軸とする起業家達が、日々スタートアップ企業を立ち上げ、世界中の投資家の注目を集めるに至っている。

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2013年7月17日 up date

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