NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

「イスラム国家」樹立という誘惑

グローバリゼーションがもたらしたイスラム国思想の流入

イスラム法による統治の確立、そのためには暴力的手段も辞さない、と主張するイスラム主義組織「アル・ムハジロン」は、1980年代に英国(中東ではない点に留意)で活動を始めた。

そもそもイスラム史をたどると(神から選ばれた最後の預言者とされる)ムハンマド死後の初期の時代には、ムハンマドの後継者・代理人にあたる「カリフ」を首長とする政治体制が存在した。特に初代カリフに選出されたアブ―・バクルから第四代アリーまでの時代は「正統カリフ時代」と呼ばれ、ムハンマドの血族にして話し合いで選出されたカリフの下、「統一されたイスラム共同体が正しくイスラムの教えを奉じた時代」として長く理想視されている。

以後の中東イスラム史においては、権力を握った者は「カリフ」を名乗り、その正統性を確保することで、政治的に利用しようとしてきたし、またその一方で「正統カリフ時代」のようなイスラム的に「正しい」カリフ制度を復活させようという試みが何度となくなされてきた。

「アル・ムハジロン」は、

1)イスラム法に基づくカリフ制国家の現代における再興

2)これを実現するためのジハードへの参加は全てのイスラム教徒の義務

3)ジハードには暴力的手段も含まれる

と主張した。

 

そして、たとえイスラム教徒であってもカリフ制復活を支持しない者は「カーフィル」(不信仰者)であり、天罰が与えられるべき者であるとした。つまり、このようなアル・ムハジロンの主張に基づけば、イスラム教徒が多数を占めていても、世俗主義的国家原則に基づいて統治を行っている国家は「不信仰者たちの国家」であり、打倒すべき対象となる。

この主張に共鳴して、「シャリーア(イスラム法)4」の名称を冠する支部が次第に世界各地で作られた。インドネシアでも2010年に「シャリーア4インドネシア」という意見交換サイトが立ち上がり、草の根イスラム市民に向けたインドネシア語による情報発信が行われている。

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2014年11月14日 up date

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