NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

久し振りに海に出て

古庄 幸一(理事)

台風一過の九月中旬、久し振りに海に出た。海から式年遷宮の準備が整った伊勢神宮に参拝するというクルーズだ。観音崎灯台を右に見ながら東京湾を南下、荷物を片付けてデッキに上ると、日没直後で右前方に影絵のように浮かび出た美しい富士山があった。

温かいコーヒーカップを両手で抱きかかえ潮風を体に受けると、体中の細胞が洗われる様な気持ちになる。黒潮の甘い潮の香が鼻をくすぐり何とも言えず懐かしく、風の音は両耳の鼓膜を揺する。両足にはエンジンの鼓動が心地好く伝わり、錆び付いていた動物的なアンテナが一つ一つ蘇るのが判り嬉しい。

夜は満天の星を眺め、雄大な宇宙に思いを馳せる。人工衛星らしい光を見つけ、あの中から地球を見ているだろう宇宙飛行士のことを思う。流れ星が尾を引く。「ありがとう。ありがとう。ありがとう。」と三回言おうとするが言い負せずに消える。この海という自然に対する感謝の気持ちは通じなかったかなと次の流れ星を待つ。海面に目を落とすと、波頭に夜行虫がキラキラ光り消えていく。

ポケットに入れたままの携帯電話は、圏外となり休んでいる。携帯電話に追われる生活から解放され、ホッとできるのも船旅の楽しみの一つだろう。世の中がIT化し、人々の生活は自然界から遠ざかり、動物的な本能を退化させているのではと心配する。いや退化でなく現在を生きるために進化しているのだと若者は言うかも知れないが、災害や事故から自分の身を守るためには、時々こうして船旅で海に出る様な自然界に戻ることをお勧めしたい。

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2013年12月12日 up date

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